East Music Works's blog

なんでも屋eastによる、ベース&ギター改造、ヨーヨー、3Dプリンター&プロダクト製作、音楽レビュー、レトロゲームなどの趣味ブログ。最近はクレーンゲームにドはまり。

「俺はまだ本気出してないだけ」が素晴らしくて泣ける

どうもeastです。

大阪に引っ越してきて、あんまり本買わないようにしようとか思ってたんですが、

思わず目に入ったので全巻大人買いしてしまいました。

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※第1巻は今、知人の手元にあります。

ついでなのでリンクも貼っておきます。

画がご覧の通りなせいか、

堤真一主演で映画になった割に、原作は全巻セットでもかなり安値で売ってます。

作者さん、でも、ボクは新品で買いましたよ!

 

「俺はまだ本気出してない」 

いつの間にかインターネット上でちらほら見かけるようになって、

俺はまだまだやれるんだ、本気出したらすげぇんだぞ、

という、若干弱気な自己主張の代名詞みたいな言葉として定着した感があります。

 

しかし、この原作、主人公の「大黒シズオ(40)」は、

このセリフは一言も発しません。

それどころか、インターネットのイの字も出てこないし、

いまどきスマホも描かれない。デジタル的な要素は何も出てこない。

人と、人の関係性だけを描いた、すごいシンプルな内容です。

 

別に大黒シズオにシンパシーがあるわけではないんですが、

3Dプリンターやらなんやらで何かを始めようとしている

30ちょうどのおっさんには身につまされる内容ばかり。

 

とはいえ、そうですね、

仕事と出世を通じて日本を語りたがる島耕作とは真逆の物語です。

 

大黒シズオはある日突然仕事を辞め、漫画家になると宣言し、

雑誌デビューを目指して、自己満足的な漫画を、下手な画力で描き続けます。

物語のほとんどは、バイトに行く、漫画を描く、編集社に行く、ボツになる、

悩む、父親に怒られる、バイトに行く、のサイクルで成り立ってます。

いまどきこんな短調な、でも日常をえぐり出してる漫画、ないような気がしますね。

 

ときどきキャラクターの上に(18)とか、(40)とか、

年齢が出るんですが、これがなんとも、その場面場面の雰囲気を引き締めています。

 

担当編集者の励まし(?)、

居酒屋を畳んで引退、家にいる父親からのお叱り、

ひとり娘から開けられている精神的な距離とすこしばかりの期待を受けて、

彼は漫画を描き続け、デビューを目指す中で佳作を取ったりもします。

そんな中、小学校からの付き合いである友人、宮田を中心に物語が急展開し、

シズオが宮田に宛てて描く漫画を通じて

家族のあり方と人の生き方について提起があり、終わります。

このあたりはぜひ原作読んでください。5巻で泣きます。

 

先ほど、島耕作とは真逆、と言いましたが、

あれは団塊の世代が中心となって働き、高度経済成長があり、バブルがあって、

日本が右肩上がりの時代において受け入れられ、成り立った漫画だと思います。

でもね、ふと我に返ってまわりを見回してみると、

その頃の輝きは僕たちの世代にとって幻だと思います。

 

少し前「お前出世のこととか考えたりしないの?」と聞かれたことがあります。

この質問にはお茶を濁して答えましたが、

そもそもそんな考え方がとんでもないと思うのは僕だけでしょうか。

出世そのものを考えることなんかよりも、

自分が偉くなったそのポジションで何をすべきか、

何ができるかを考え巡らせるのが先でしょう。

 

その上で、昇進が実現の手段として必要なのならば、目指せばいい。

どうにも世の中、順番が逆なことがあるようだ、というのを実感した瞬間でした。

 

課長、常務、専務、最後は社長まで上り詰めた島耕作(今は会長やってるらしい)、

彼はいったい何をするためにそこまで上り詰めたのか?

単純に、会社の中で仕事し、成果を出し、出世することが彼の生き方なのでしょう。

 

しかし、何千人と社員のいる会社で社長になれる人間はひと握り。

「課長島耕作」が描かない「その他大勢の人間」のひとつの姿が、

「俺はまだ本気出してないだけ」に存在しています。

これもまた、生き方の話だと思うのです。

 

単に、大黒シズオは漫画を描きながら生きるという選択をした、

という話なのですよ。

そこに、収入の不安や、生活の不安や、

「だから漫画は趣味でやります」ということはないんです。

 

ちなみに、私はこの漫画、「大黒シズオ」ではなく、

友人「宮田」の物語だと思ってます。

あと、キャラクターは宇波さんが好きです。

誰か夜通し語りあわないか。

 

今日はこれまで!